旅人の手記 三冊目 ‐ 蝉海のブログ -

日常のよしなし事や、マンガ・アニメ・ライトノベルなどのポップ・カルチャーに関する文章をつらつらと述べるブログ。その他の話題もたまに。とっても不定期に更新中。

今期のスクエニアニメは果たして

4月期のアニメも、始まってから1ヶ月近くが経とうとしています。
そこで、今期のスクウェア・エニックス系列(以下、スクエニ)の雑誌に
連載されている作品を原作としたアニメ4本について、
私の雑感をお話したいと思います。
また以下の記事では、声優や作画、脚本構成など、
アニメ特有の項目に重点を置いています。
ストーリーについては、説明を結構省いているものがあるので、
そのことをご留意の上でお読み下さい。


まず、これは説明不要でしょう。『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST
オリジナル展開が中心であった前シリーズを踏まえ、
原作に沿うことをモットーにして再アニメ化したものです。

今回はスタッフも声優も(一部メインキャラクター除く)一新されて、
作画も前作の雰囲気とは大幅に変わりました。
展開は、原作のテンポや軽快さを忠実に再現していて、これはかなりの好印象です。
ただ、作画がかなりあっさりとしたものになってしまい、
ストーリーも少し端折っているところもあって、
重厚さが今ひとつ感じられなくなってしまったのは、少し残念です。
ここがどうしても違和感を覚えてしまいます。
これは慣れもありますから、もう少し様子見が必要かな。
とりあえず、及第点はいっていると思いますので、
これから良くなっていくことを期待します。
 

それから、あの『SCHOOL RAMBLE』(マガジン・講談社 刊)の小林尽
ガンガンJOKER(旧・ガンガンWING)で連載中の『夏のあらし!
戦前から時を越える能力を以ってやってきた少女と
パートナーである現代の少年が廻る、ノスタルジックなひと夏の物語。

原作者が有名なのと、監督を務めたのが個性派と名高い新房昭弘氏で、
アニメ化前は少し話題を呼びました。
さて、肝心の出来具合なのですが……、正直なところ結構違和感があります。
原作の作画は、少年漫画的で割りと濃い画風であるのですが、
必要以上の描き込みがされておらず端整に仕上がっていて、
癖が少ないものになっております。
しかしアニメでは、キャラクターデザインが、
それとは結構違うものになっているのです。
男のキャラは原作に忠実に描かれているのですが、
女の子の顔つきはパーツが全体的に縦に長く配置され、
ひどくシャープな印象を与えるものになって、違和感を覚えるものがありました。
また、明暗のコントラストが激しく、
所謂アニメ塗りを徹しているような色使いです。
これも、個人的には今ひとつなのですよ。
原作だと陰影の処理は、縦線を描くことが多いのです。
このような表現は画面に少し掠れた印象与え、
鄙びた舞台とノスタルジックな内容にマッチするので、
その雰囲気をどうにかアニメでも再現して欲しかったのですが……。
おまけに、主題歌が有り得ないぐらいアングラ・イロモノ指向で、
これも原作の雰囲気と乖離した感じで、かなり微妙です。
まとめますと、全体的に演出が空回りしているイメージが強く、
2話目までは結構期待を裏切られた感じでした。

しかし3話目になって、ある程度シリアスなシーンになってから、
ようやくこれは「良く描けている」と思えました。
臨場感や切迫した空気が伝わるような演出がきちんとなされていて、
なかなかに良かったです。
それと、脚本の構成も巧くなったように思えます。
1・2話は原作のエピソードを詰め込んだ上に、
コメディシーンのドタバタが強調されてかなり忙しなく、
話に入り込み難い印象だったのですが、
3話目は過不足なくしっかりと話が繋がっていました。
出だしは今ひとつだったけれど、これからに期待したいです。

余談。エンドカード(番組の最後に表示される一枚絵)は
スクエニ系作家の方々から、寄せられた描き下ろしイラストです。
これまでに描かれた人は、氷川へきるさん、方條ゆとりさん、介錯さん。


ここから、原作未読のアニメです。


さて次は、Gファンタジーで連載中の
ゴシック及びメルヘン的要素を含んだダークファンタジー、『Pandora Hearts

まず作画ですが、細い描線ながらもきっちりと描かれて、
これは中々いい感じです。
キャラクターデザインも、原作の絵からは離れているようですが、
作画と同様に安定感があるのは好印象。
ストーリー展開は、少し分かり難いところはあるものの、
そこまで悪い構成ではありません。
しかし、演出や描写については、ひどく難があります。
全体を通して、とにかく迫力がない。
コントラストは緩やかなのですが、
この作品の場合はそれが逆に仇になっているように思えます。
このため作品の肝であろう、ゴシックの煌びやかさ・荘厳さ、
及びメルヘンの幻想感・不気味さが薄らいで見えるのです。
内容は、
おどろおどろしい雰囲気や心の闇を強く象徴するようなシーンが多いのですが、
そこで引き込まれないのはかなりの問題です。
そして、4話目にもなって余り改善が見受けられないのも、少々厳しい。
観ていくと違和感は少し薄らいでいきましたが、
これは単なる「慣れ」であるように思えます。
このままだと特に話題にならず終わってしまいそうで、かなり不安な状況です。


最後は、ヤングガンガンで連載中の学園麻雀漫画、『咲 -saki-
メインキャラクターの女子高生達が、部活動と言う形で麻雀を通して、
それぞれの想いと抱えながら葛藤を重ねて成長していくという、
どちらかというと
「スポーツ漫画」などに近い構成になっている内容が話題を呼んだ作品です。

原作の画風は知っていて、
キャラクターデザインがそれとは多少の差異があったのが少々不安でしたが、
蓋を開けてみると、結構良い感じでした。
作画は非常に安定しており、且つ各キャラクターも良く動き、
その個性を表していると思えます。
脚本も早すぎず遅すぎずきちんと構成されています。
肝となる麻雀シーンもじつに良く描けています。
一部派手な演出もありましたが、この程度なら全然問題はないでしょう。
少し初心者を置き去りにしないかが心配ですが、
この内容ならストーリーやキャラクターで引っ張っていけると思えますので、
この点ではむしろ従来のギャンブルや裏社会的要素の強い麻雀漫画よりも、
入り込みやすいのではないかと考えられます。


それでは長くなりました。
出だしが様々なスクエニアニメですが、これからも期待していきたいと思います。