旅人の手記 三冊目 ‐ 蝉海のブログ -

日常のよしなし事や、マンガ・アニメ・ライトノベルなどのポップ・カルチャーに関する文章をつらつらと述べるブログ。その他の話題もたまに。とっても不定期に更新中。

論説

『ずるさ』のあるズレたコード――『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J)作者: 森田季節,文倉十出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2008/09メディア: 文庫購入: 25人 クリック: 318回この商品を含むブログ (104件) を見る ありがちなようで不思議な物語を読んだ。或いは…

三島由紀夫による〈外面―表面への意志〉と美的死生観(後編)

・ 死――、内と外の合一。及びカイロスの問題について 『鏡子の家』(1959年)は三島の作品の中でも、「筋肉」と「美」の関係性と「死」の問題について、徹底して考察された指折りの一作である。あらすじは次の通りだ。 資産家の令嬢である鏡子の家には、四人…

三島由紀夫による〈外面―表面への意志〉と美的死生観(前編)

序文 三島由紀夫は、内面の外面への還元、及び両者の合一という問題に対し、その命を以って敢然と挑んだ作家であった。 通例、人間をして内面とは精神のことであり、表面とは肉体のことを示す。このような「内と外」の二元論はソクラテス以来、西洋において…

「カゲロウプロジェクト」のメドゥーサ観――「見る≠所有する」というアンチテーゼ

※ 以下の作品について、核心的な部分についてのネタバレがあります。 マンガ『カゲロウデイズ』1〜5 (著・じん 作画・佐藤まひろ 刊・メディアファクトリー)1〜5 小説『カゲロウデイズ』1〜5(著・じん 刊・エンターブレイン) アニメ『メカクシティアクタ…

〈論説〉実存の不安(或いはアイデンティティ・クライシス)と自己変革イデオロギー、及び脱大衆道徳性の問題――『忘却のクレイドル』完結に寄せて

※ 以下の作品について、物語の核心部分に関する記述があります。 また文中には一部辛辣な表現もあります。 『忘却のクレイドル』(藤野もやむ マッグガーデン) 『はこぶね白書』(〃) 藤野もやむは、〈実存 existentia〉と内面意志の発現における問題と格…

〈論説〉『デュラララ!!』による、美学的見地から推論するデュラハンという存在と、岸谷新羅のファナティックな美的観念より考察する、恋愛におけるエゴイズム

以下に記述するのは、現在放送されているアニメ『デュラララ!!』(TBS 金曜深夜 原作:成田良悟 メディアワークス 刊)の作中で描写される、「デュラハン」という存在に対しての美的観念についての推論である。 「首なしライダー」というのは、実際の日本で…

〈論説〉藤野もやむ作品における、ファンタジーというエッセンスと自己同一性拡散・統合の問題との連関についての考察

『ナイトメア☆チルドレン』『まいんどりーむ』『はこぶね白書』など、メルヘンティックな意匠を湛える藤野もやむの作品において、ファンタジーというガジェットがその物語の中核に据えられる場合、登場人物のアイデンティティにおける問題と密接に連関してく…